「魅惑の神薬」-5
2010年 07月 31日
「神薬」と云うネーミングは、いかにも国粋的、または神仙思想的であるが、
当時の西洋医学を取り入れようとした非常にイノベーティブな売薬であった
ことが解って来た。
とは云え、内容成分においてはとても近代医学の礎であったとは考えにくい
代物であるが、ここがまた面白い。
そしてまた、この容器が当時の近代医学の象徴であるかのように人気を博した
ことも興味深い。
7年ほど前のことであるが、私が東京都内の山間の廃村を訪れた時のことである。
ある程度の場所の特定はしていたものの、地図を片手に注意深く廃村へ向かう
荒廃した山道を歩いていた。
すると、足下にコバルトブルーのガラスの破片を見つけ驚愕、興奮して先を急ぐ
と次々と破片は多くなり、とうとう「神薬」のエンボスを確認できるまでの
破片を数十個拾ったことがある。
まるでおとぎ話の世界のようであったが、残念ながらこの時は、「神薬」の
完器を手にすることは出来なかった。
おそらく、林業を主体に生活を営んでいたこの村人は、日常的に「神薬」を
気付け薬として使用していたと推測でき、その量たるや驚くべき量であった。
完器を求めて再び訪れたこの「村」は、以前「昔取った杵柄シリーズ01」で
紹介したが、思わず我々HBCのドリームランド、ワンダーランドだとばかりに
「HBC-LAND」と称した「神薬ザクザクのハケ」があった。
いたるところに転がっている以外に、一軒の家屋跡地の小さなハケから一度に
10個以上の「神薬」を掘り出す幸運に恵まれた。
これは、「神薬」が木こりだけの使用にとどまらず、家庭内においても子供を
含めて幅広く浸透していた証ではないだろうか。
「甘スースー」。
真っ黒いおどろおどろしい液体は、口にすると甘くてハッカの香り・・・
そして気分は高揚する・・・
楽しみの少ない時代、それも山間部では嗜好品として、また子供の駄菓子
としても扱われていたかも知れない。
この神薬は、ビン底に屋号のエンボスがあります。
こちらは、透明やアクアの神薬。
茶筋入りの神薬など。
コバルトブルーでない水色とピンクの神薬。
角形神薬。
こちらは、円柱形の「霊神薬」
角形の富製薬株式会社の神薬。残念ながら割れてます。
「神薬」とエンボスがなくてもこれらの容器にラベルが貼られて神薬が
入っていたことを骨董屋さんで確認したことがあります。
様々な薬ビンとして流用されたのでしょうが、このコバルトブルー、
瑠璃色のビンに納められていたのは、ほとんどが「神薬」ではなかったの
ではないでしょうか?
次回は、「神薬」「コロダイン」についてです。