魅惑の神薬-3
2010年 07月 18日
「置き薬」と云えば、今日でも地場産業として富山、滋賀、奈良、佐賀などを
中心に、全国に販売ルートを持つ売薬である。
特に富山の配置販売は、歴史も古く元禄3年(1690)にまで遡る。
そして、配置薬において庄司先生が現在までに確認している「神薬」は、
富山売薬と奈良売薬のものが大多数だそうだ。
中でも、富山売薬の代表的なものをあげると、
朝日製薬(株)「アサヒ神薬」、(株)廣貫堂「トヤマ神薬」、滑川(株)、
保壽堂「保壽神薬」、(株)酒井大岩堂「サカイ神薬」、
(株)仁済堂「仙泉神薬」、越中薬業(株)「仙翁神薬」、
日ノ本売薬(株)「日本神薬」、水原薬房「改良神薬」、
東亜製薬(株)「東亜神薬」、東洋製薬「東洋神薬」、
富山薬剤(株)「太陽神薬」、高岡薬剤(株)「起死回生神薬」、
(株)茶木谷廣貫堂「常備救急神薬」、壽全堂「仁命神薬」。
これ以外にも、ただの「神薬」と云う製品名のものに関しては、
保寿堂製薬(株)、配薬(株)、(株)師天堂、(株)厚生師天堂、
岩瀬売薬会社、共栄製薬(株)、富山売薬(株)、新興日本製薬(株)
などのメーカーがあったが、
昭和中頃にはその数50社は下らなかったそうである。
庄司先生によると富山売薬の「神薬」びん形状は、大きく4タイプに
分類出来るそうである。
1)胴体が角張った長方形をしたもの
2)胴体が丸みをおびたもの
3)胴体が六角ないしは八角柱をしたもの
4)平たい方形をしたもの ※この4)のタイプは、さらに細かく分類出来る
このサークルK神薬25gは、富山は共栄製薬(株)のものである。
裏面には「富山県中田町 共栄製薬KK」のエンボス
こちらは富山と云えば「(株)廣貫堂」の「トヤマ神薬」(左)
右は、表が「神薬」のみで裏面に「トヤマ廣貫堂」のエンボス
これは裏面に「薬生堂」のエンボス
この神薬は、胴体が丸みをおびたタイプの「延壽堂神薬」
富山売薬主流の中、この丸みをおびたタイプは奈良の大和売薬の流れを
くむものと思われる。
やはり配置薬において伝統ある奈良の大和売薬は、大正から昭和10年代に
かけて、奥村正永堂、梶谷延壽堂(現・新生薬品工業)、盛徳堂薬館、
豊島貫正社(現・豊島製薬)、宮本延壽堂(現・延壽堂製薬(株))、
安本恵星社(現・成光薬品工業(株))など、50社に近いメーカーが
「神薬」を盛んに製造していたそうだ。
この地方の「神薬」は、ほとんどのびんに「コロダイン神薬」と表記されて
おり、びん形の特長は、富山のものに比べると「なで形」であった。
右は、安川コロダイン
こちらは「本統神薬」、「新田資生堂」のものと判断できる。
「本統」と云う言葉は、いかにも偽薬に対し、正当性を主張しているかの
ようである。それだけ、多くの様々な「神薬」が存在した証でもある。
裏面に「東京資生堂」のエンボス
「本統神薬」は、明治中期から大正期にかけてのものと思われる。
「佐藤尚中博士方剤」
あと数回、神薬特集やります!
所蔵すべて:BOW会長
出典と云うより、ほとんど抜粋:
謎の売薬「神薬」(第一部〜二部) ボトルシアター館長 庄司 太一